指揮者の新田ユリ先生へインタビューしました!
7月31日に愛知県立芸術大学で開催する講座「プロ奏者の目線でウインドオーケストラを体感!」にむけて、指揮者の新田ユリ先生にお話しをうかがいました。

この合奏の授業では、学生にどんなことを習得してほしいと思って指導していますか?
コンサートに向けて指揮をする際は、曲を仕上げるために指示して導いていくのですが、この授業では学生が音楽を専門的に学ぶ者として、指揮者の指示を待つのではなく、自分の楽譜をどういうふうに演奏するのがこの曲にとって良いのか、まわりとどうアンサンブルしたら良いのかを、自身で考えながら演奏を仕上げていくのが大事だと思っています。
「ただ楽器を上手に吹けます」では音楽家として活動していくには不十分。なので私も授業の中では曲の背景をチラッチラッと伝えていくんですね。その先は彼ら自身のアンテナ、好奇心やリサーチへの心にどう繋がっていくかというのを見ています。作品や作曲家について深堀りする学生もいますよ。
また彼らは指導者になる可能性も大で、今も高校や大学の生徒に教えている学生もいます。なので「どういう指導をしたら演奏がよくなっていくかを考えながら演奏してもらう」というのも意識して授業しています。これは彼らが自身の演奏を客観的に見直す機会にもなるので、とても大事に思っています。
4月から始まったウインドオーケストラ(吹奏楽)の授業ですが、現在の状況はいかがですか?
当初は「曲の中でお互いが何をやっているのかを知る」というところから始まりました。6月末の現在は「この名曲のどういう部分を伝えたいか、お客さんにどういうふうに聴いてもらいたいか」を落とし込んで演奏をつくりあげるという段階にきています。

授業では学生さんの成長も感じますか?
感じますね。指示したひとつの言葉に対しての反応が全然ちがいます。1を言って10わかる状態にどんどんなってくると言いますか、全部事細かに言わなくても、曲で同じようなことが出てきたらまた同じように気をつける、とかですね。こういうのは能力と気持ちがないとできないですが、愛知芸大の学生にはそういった力がすごくあると思います。
全国各地の音楽大学で指導をされている新田先生ですが、愛知芸大の学生にはどのような印象をお持ちですか?
自主的に何とかしようという気持ちがすごくある学生が多いですね。愛知芸大には15年前にオーケストラ(管弦楽)の授業に関わっていて、このウインドオーケストラ(吹奏楽)の授業は3年目になりますが、以前から同じような意識の高さを感じています。
自主的に何とかしようという気持ちが強い学生が多いですね。今期の学生も、何かできなかったら、お互いにどうしようかというのを先輩・後輩の垣根を越えて指示し合ったり、別のセクションから指摘し合ったりしています。これはプロの現場でも当たり前に起こることで、愛知芸大生の意識も高いです。
また人がいないときに、どの学生が代奏(代わりに演奏すること)をやっても、「自分は代奏だからできません」ということは絶対に言わないんですよ。代奏だけどちゃんと務めなきゃだめっていう心意気を持っていますね。これって演奏家として当然なんですよね。プロの現場にいくといつ自分にチャンスがやってくるか分からない。急に電話がかかってきて「奏者が倒れちゃったから代わりに頼む」ということもあるかもしれない。ある意味、演奏家としてはそれを待ち焦がれているくらいでないといけないですもんね。
普段プロのオーケストラで指揮をされている新田先生として、プロオーケストラと学生オケーケストラとで、アプローチの仕方に違いはありますか?
プロフェッショナルなオーケストラというのは、演奏者そのものの経験値が圧倒的に違うんですね。本番に向けての練習日数も、プロは2、3日ですが、学生のオーケストラだと何か月という単位になってきます。なのでビルディングの仕方が全く違ってきますね。
プロは自分で考える裏付けになる経験と知識と力量が圧倒的に違います。たとえば1回通して演奏して、何かまずかったなという点があれば、2回目通したときに必ず激変します。自分たちでまずいところがすぐわかるというのがやはり違いますね。

ウインドオーケストラの演奏をつくる上で、先生はどのようなことを大事にされていますか?何ですか?
ウインドオーケストラの楽曲には、吹奏楽のために書かれた「オリジナル作品」と、もともとは管弦楽のために書かれた曲を吹奏楽版に編曲した「アレンジ作品」があります。オリジナル作品とアレンジ作品とでは、私の中でも作品に向かう視点と態度が変わってきます。
アレンジ作品を演奏するときは、もともとの管弦楽の響きが頭にあって、そこから音をつくりあげます。なのでオリジナルを吹くときの吹き方とは全然ちがうことを要求することもいっぱいあるんですね。
そういう意味では、ウインドオーケストラというのはすごく幅広く色んなジャンルに対応しているなと思っています。シンフォニーオーケストラのようなこともできれば、マーチやポップスなどもできる。臨機応変に、自由度高く対応できる形態だと思います。たとえば弦楽器の人だと、幼い頃からずっとクラシックで勉強することがほとんどです。将来仕事として映画音楽やゲームミュージックをやる機会はありますが、学んでいく中でそういったジャンルに触れる機会はかなり少ないです。でも管楽器の人は、芸術大学の中でもそういうジャンルを学ぶ機会があるんですよね。
7/31の授業、そしてミニコンサートはどのようなものになりますか?
コンサート直前の授業ということで、各曲の確認をしていくのですが、演奏をもう一段階あげてブラッシュアップするという時間にしたいと思います。
今期の授業では、吹奏楽の有名な曲をとりあげています。学生も「名曲のどういう部分をお客さんに伝えたいか」というのを考えて取り組んでくれると思います。
~新田先生、貴重なお話しをお聞かせいただき、ありがとうございました~
本講座について
「芸術との出会い~ウインドオーケストラの世界へようこそ~」と題し、3つの講座をとおしてウインドオーケストラ(吹奏楽)の楽しみ方を学ぶ連続講座です。
7月31日が第3回(最終回)。愛知県立芸術大学のウインドオーケストラの合奏授業を観覧し、ミニコンサートを鑑賞します。
単発受講も可能。詳細は以下ページへ。
芸術との出会い~ウインドオーケストラの世界へようこそ~(愛知県立芸術大学連携講座)

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更新日:2024年07月19日