○日進市環境まちづくり基本条例
平成16年9月30日
条例第18号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第12条)
第2章 基本的な課題と計画(第13条―第17条)
第3章 推進施策(第18条―第27条)
第4章 推進と調整体制の整備(第28条―第30条)
第5章 雑則(第31条)
附則
天白川や身近な里山など、豊かな水と緑に恵まれた私たちのふるさと日進は、郷土の人々が長い年月にわたって、たゆまぬ努力により、自然と共生しながらこの地に合った伝統や文化を育んできました。
こうした自然的、文化的条件に加え、名古屋市の東、豊田市の西に隣接する地理的条件から、住宅が造られ、人口が急激に増加してきました。また、大学をはじめとする教育機関が数多く立地するなど、一時的な滞在者なども多くなってきました。
それにともない、市内の環境も大きく変わってきました。ごみ問題や河川の汚濁、車の排気ガスや騒音、美しい景観の減少といった問題が発生し、さらに、環境ホルモンやダイオキシン類などの各種の有害化学物質といった新たな問題も生まれ、きれいな大気、水、土壌が汚染されつつあります。
現代社会において、人は大量の生産・消費・廃棄という社会システムの中で、生活の便利さや物の豊かさを求めた結果、資源、エネルギーなどを大量に消費する社会経済活動を続けてきました。しかし、このことは環境へ大きな負荷を与え、自然の再生能力を超えるばかりでなく、地球環境を脅かすまでになっています。
もとより、すべての市民は、良好な環境の恵みにより健康で、安全で、しかも文化的な生活を営む権利を有するとともに、恵み豊かな環境を保全し、さらには快適な環境を創りだしながら、これを将来の世代に引き継ぐべき義務を担っています。
私たちは、自らが環境に負荷を与えている存在であること、そして地球環境の保全が人類共通の最重要課題であることを改めて確認しなければなりません。そして、持続的発展が可能な社会の実現のため、自然と人との共生を考え、環境への負荷の少ない循環を基調とした地域のあり方や一人ひとりの生活様式そのものの見直しや転換を図らなければなりません。
このような認識のもとに、私たちは社会のあらゆる人々がそれぞれの役割を公平に分担し、自主的で積極的な参画と共働により、ふるさと日進の環境まちづくりを推進するため、この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、良好な環境の保全と創出(以下「環境の保全等」といいます。)に向けた環境まちづくりのための基本となる考え方と基本原則を定めるとともに、市民、市民団体、事業者(以下「市民等」という。)滞在者等、教育機関、市と市職員の責任と義務を明らかにし、環境施策の基本となる事項と施策の企画立案、実施、評価などに関する手続を定めることにより、環境まちづくりを総合的で計画的に推進することを目的とします。
(定義)
第2条 この条例において、次に掲げる用語の意義は、次のとおりです。
(1) 良好な環境 現在と将来の市民が健康を維持し、安心で安全な文化的生活を営むことができる生活環境、自然環境と歴史的文化的環境をいいます。
(2) 環境まちづくり 環境の保全等をはじめ、地域やまちの姿、社会の仕組み、市民の生活スタイルが環境に配慮され、持続的発展が可能な社会の実現のために経済社会システムの見直しや転換を図りながら、まちづくりを推進することをいいます。
(3) 市民団体 公益の増進に寄与することを目的とし、主として市民や事業者により組織された自治組織、ボランティア団体などをいいます。
(4) 共働 市民等と市と市職員がそれぞれの自覚と責任のもとに、その立場や特性を尊重し、相互に支え合い、環境まちづくりに協力して取り組むことをいいます。
(5) 循環型社会 廃棄物の発生の抑制や資源の循環的な利用の促進と適正な処分の確保により、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷が低減される社会をいいます。
(6) コミュニティ 同じ目的や関心を共有する人々の集まりで、居住地域における日常生活の中での出会いや多様な地域活動への参加などを通じて形成されるつながりや共通の関心に支えられた活動によって形成される人と人のつながりをいいます。
(7) 共育 家庭、学校、地域や職場において、市民等が対等な立場で相互に学び合い、共に生きる力と豊かな心を育むことをいいます。
(8) 環境への負荷 環境基本法(平成5年法律第91号)第2条に規定する環境への負荷をいいます。
(9) 地球環境保全 環境基本法第2条に規定する地球環境保全をいいます。
(10) 公害 環境基本法第2条に規定する公害をいいます。
(良好な環境の恵みを享受する権利と将来へ引き継ぐ義務)
第3条 市民には、良好な環境の恵みを享受する権利とともに、これを将来の世代に引き継ぐ義務があります。
(基本となる考え方)
第4条 環境まちづくりは、前条に定める権利の実現と義務が果たされることを目的として行わなければなりません。
2 環境まちづくりは、地域の歴史、風土、文化などを生かし育むとともに、多様な生物が生息できる良好な大気、水、土壌といった豊かな自然環境が、広域的なつながりの中で保全され、人と自然との共生が実現されるよう行わなければなりません。
3 環境まちづくりは、人類共通の課題である地球環境保全に向けて、環境への負荷の少ない循環型社会を築き上げることを目的として行わなければなりません。
4 すべての事業活動、日常生活と市の施策は、環境を優先して行われなければなりません。
5 環境まちづくりは、人々の能力と持ち味を最大限に活かし、人それぞれの立場を理解、尊重しながら参加と対話を通じて行わなければなりません。
(基本原則)
第5条 環境まちづくり施策は、環境に関する情報を市民等と市と市職員が共有することを基本に進められなければなりません(情報共有の原則)。
2 環境まちづくり施策は、市民等と市と市職員が共働して取り組まれなければなりません(共働の原則)。
3 市は、環境まちづくり施策の調査、企画立案、実施、評価、見直しにあたり、市民等に対し、明確に説明するよう努めなければなりません(説明責任の原則)。
4 市は、環境の保全等に関し、深刻な影響を招くおそれがあると認めるときは、あらかじめ予防的対策がとられるよう努めなければなりません(予防の原則)。
5 市は、環境まちづくり施策の調査、企画立案、実施、評価、見直しにあたり、市民等が参加する機会を確保しなければなりません(市民参加の原則)。
(市民の責任と義務)
第6条 市民は、自らの生活や活動に伴って生ずる環境への負荷を低減するよう努めなければなりません。
2 市民は、環境まちづくり施策に積極的に参加し、協力するよう努めなければなりません。
(市民団体の責任と義務)
第7条 市民団体は、自らの活動に伴って生ずる環境への負荷を低減するとともに、環境まちづくり施策に積極的に参加し、協力するよう努めなければなりません。
2 市民団体は、自らの環境まちづくりを推進するために、市民や事業者が参加できる機会の充実や体制の整備、情報の提供を図るよう努めなければなりません。
(事業者の責任と義務)
第8条 事業者は、事業活動に伴って生ずる公害などの発生の予防や防止をするとともに、製品等の使用や廃棄による環境への負荷の低減、その他自然環境の適正な保全を図るために必要な措置をとるよう努めなければなりません。
2 事業者は、環境まちづくり施策に積極的に参加し、協力するよう努めなければなりません。
(滞在者等の責任と義務)
第9条 市内に一時的に滞在する者あるいは通過する者は、第6条に定める市民の責任と義務に準じて環境の保全等に努めなければなりません。
(教育機関の責任と義務)
第10条 教育機関は、市民等、市と市職員と連携して、環境まちづくりに関する共育を積極的に推進するよう努めなければなりません。
2 教育機関は、知識、技術、情報、施設、設備と人材を積極的に提供し、環境まちづくり施策に参加し、協力するよう努めなければなりません。
(市の責任と義務)
第11条 市は、環境まちづくりに関する総合的で計画的な施策を策定し、実施しなければなりません。
2 市は、施策の策定と実施にあたっては、環境への負荷の低減と影響に配慮し、環境の保全等に積極的に努めなければなりません。
(市職員の責任と義務)
第12条 市職員は、まちづくりの専門スタッフとして、環境まちづくりにおける市民等への情報提供や市民等との連携に努め、市民参加のもとに政策形成を進めるよう努めなければなりません。
第2章 基本的な課題と計画
(基本的な課題)
第13条 市民等、市と市職員は、第4条に定める基本となる考え方の実現を図るため、次に掲げる課題に共働して取り組みます。
(1) 水環境に関すること。
(2) 緑の環境に関すること。
(3) 前2号以外の自然環境に関すること。
(4) 公害その他生活環境に関すること。
(5) まちの快適性に関すること。
(6) 資源・エネルギーに関すること。
(7) 地球環境に関すること。
(8) コミュニティに関すること。
(9) 参加と共育に関すること。
(10) その他環境まちづくりに関すること。
(環境基本計画)
第14条 市長は、環境まちづくり施策を総合的で計画的に推進するため、市民等と共働して日進市環境基本計画(以下「環境基本計画」という。)を策定しなければなりません。
2 環境基本計画は、環境まちづくりについて、次に掲げる事項を定めます。
(1) 目指すべき環境像
(2) 環境像を実現するための施策の大綱
(3) 環境基本計画の推進に必要な事項
(4) 前3号に掲げるもののほか、環境まちづくりに関する必要な事項
3 市長は、環境基本計画の見直しにあたっては、市民等の参画と協力が得られるよう必要な措置をとらなければなりません。
4 市長は、環境基本計画を策定したときや変更したときは、速やかに公表しなければなりません。
(地域環境まちづくり行動計画)
第15条 市長は、環境基本計画の具体的な推進を図るための地域環境まちづくり行動計画を市民等と共働して立案し、その実施に努めなければなりません。
(環境基本計画等の進行管理)
第16条 市長は、環境基本計画と地域環境まちづくり行動計画(以下「環境基本計画等」という。)の適切な進行管理を図るため、毎年度、次に掲げる事項をとりまとめた環境まちづくりに関する年次報告書を作成し、公表しなければなりません。
(1) 市域における環境調査結果と環境基本計画に位置づけられた環境指標の状況
(2) 環境基本計画等の実施状況
(3) 環境基本計画等の取組に対する効果その他の現状分析
(4) その他市長が必要と認める事項
2 市長は、前項の規定により公表した年次報告書に対して、市民等の意見を聴くために必要な措置をとらなければなりません。
3 市民等は、年次報告書に関して市長に意見書を提出することができます。
(環境基本計画との整合)
第17条 市長は、あらゆる施策を策定し、実施するにあたっては、環境基本計画との整合を図るよう努めなければなりません。
第3章 推進施策
(市民等の活動の支援)
第18条 市長は、市民等が自主的、自発的に行う環境まちづくり活動を促進するため、市民等が情報を交換し、連携するための機会の提供その他必要な支援を行うよう努めなければなりません。
(子どもの参画)
第19条 市長は、環境まちづくり施策を策定し、実施する場合において、子どもの意見を聴くよう努めなければなりません。
(環境情報の収集と提供)
第20条 市長は、地域の環境から地球環境に至るまでの環境情報の収集に努めるとともに、その情報を市民等に適切に提供するため必要な措置をとらなければなりません。
(共育の推進)
第21条 市民等は、環境の保全等についての理解を深め、環境に配慮した生活と事業活動を推進するため、自ら環境まちづくりを進める共育に努めなければなりません。
2 市は、市民等の環境まちづくりについての共育を促進するため、環境に関する指導者の育成と教材の開発に努め、それらが有効に活用されるよう必要な措置をとらなければなりません。
(調査と研究の実施)
第22条 市は、環境の状況の把握、変化の予測や変化による影響の予測に関する調査、その他環境まちづくり施策の策定に必要な調査と研究に努めなければなりません。
(点検評価の実施)
第23条 市長は、市の活動が環境に与える影響について点検評価をし、環境への負荷の低減を図るため、その結果を今後の取組に反映するよう努めなければなりません。
2 事業者は、自らの事業活動に伴う環境への負荷の実態を把握し、その低減のために必要な取組に努めなければなりません。
(事前調査と対策)
第24条 市長は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業について、当該事業の実施が及ぼす影響について事業者に事前に調査させ、環境の保全等の対策がなされたものとなるよう必要な措置をとらせなければなりません。
(規制の措置)
第25条 市は、公害の原因となる行為その他環境の保全上の支障となる行為を防止するため、必要な規制の措置をとることができます。
(経済的措置)
第26条 市は、市民等が率先して行う環境への負荷の低減、その他環境の保全等に寄与する活動を促進するため、助成その他の必要な措置をとるよう努めなければなりません。
2 市は、市民等の活動や事業による環境への負荷を低減させる経済的負担を課すなどの必要な措置をとることができます。
3 前項の場合、市は、あらかじめ十分な調査と研究を行わなければなりません。
(公共施設の整備)
第27条 市は、環境の保全等を図るため、次に掲げる公共施設の整備を推進します。
(1) 下水道、廃棄物処理施設その他環境の保全上の支障を防止するために必要な施設
(2) 公園、緑地など自然環境の適正な整備と利用を図るための施設
(3) 多様な生物の生息環境の保全、適正な水循環の形成その他環境の保全等に必要な施設
第4章 推進と調整体制の整備
(推進と調整体制)
第28条 市長は、環境まちづくり施策について総合的な調整を行い、計画的に推進するために必要な体制を整備します。
2 市は、環境まちづくり施策について、市民等による組織と適切な役割分担のもと効果的に推進されるようその連携に努めなければなりません。
(環境まちづくり評価委員会)
第29条 市は、環境まちづくりに関する重要な事項の調査と審議を行うため、環境基本法第44条の規定に基づき、日進市環境まちづくり評価委員会(以下「評価委員会」という。)を置きます。
2 評価委員会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項の調査と審議を行います。
(1) 第16条第1項に規定する年次報告書に関すること。
(2) その他環境まちづくりに関する重要事項
3 評価委員会は、前項に掲げる事項を審議する場合、必要があると認めるときは、環境に関する情報その他必要な資料の提出を市その他関係機関に求めることができます。
4 評価委員会は、調査と審議の結果を公表するとともに、環境まちづくりに関する重要事項について必要があると認めるときは、市その他関係機関に助言や勧告をすることができます。
5 評価委員会は、環境まちづくりに関し優れた見識を有する者のうちから、市長が委嘱する委員7名以内で組織します。
6 委員の任期は2年とし、再任を妨げません。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とします。
7 前各項に定めるもののほか、評価委員会の組織運営に関し必要な事項は、市長が定めます。
(関係機関との連携等)
第30条 市は、国、県その他地方公共団体、民間団体その他関係機関と連携、協力をして広域的な取組を必要とする環境まちづくりに関する施策の推進に努めます。
第5章 雑則
(委任)
第31条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定めます。
附則
1 この条例は、平成17年1月1日から施行します。