障害を理由とする差別の解消の推進に関する日進市職員対応要領 平成28年3月31日      平成28年8月22日 一部改正 令和 6年3月22日 一部改正  (目的) 第1条 この要領は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」という。)に即して、法第7条に規定する事項に関し、職員が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。なお、市が事業主としての立場で労働者である障害のある職員に対して行う差別解消のための措置は、法とは別途、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。)及び地方公務員法(昭和25年法律第261号。以下「地公法」という。)の定めるところによるものとする。  (定義) 第2条 この要領における用語の定義は、法第2条に定めるところによるほか、次の各号に定めるところによる。 (1)職員 地公法第3条第2項に規定する一般職に属する職員をいう。 (2)障害 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等により起因する障害を含む。)をいう。 (3)障害のある人 障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう。 (4)別紙 障害を理由とする差別の解消の推進に関する日進市職員対応要領に係る留意事項をいう。 (5)監督者 職員のうち、課長級以上の地位にある者をいう。 (6)権利条約 障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号。)をいう。  (不当な差別的取扱いの禁止) 第3条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として、障害のある人に対する不当な差別的取扱いをすることにより、障害のある人の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、別紙の第1から第3まで及び第7に定める事項に留意するものとする。  (合理的配慮の提供) 第4条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害のある人の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮の提供をしなければならない。これに当たり、職員は、別紙の第4から第7までに定める事項に留意するものとする。  (監督者の責務) 第5条 監督者は、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項に留意して障害のある人に対する不当な差別的取扱いが行われないよう注意し、また、障害のある人に対して合理的配慮の提供がなされるよう環境の整備を図らなければならない。 (1)日常の執務を通じた指導等により、その監督する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 (2)障害のある人及びその家族その他の関係者(以下「障害のある人等」という。)から職員による不当な差別的取扱い又は職員の合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等(以下「職員による障害を理由とする差別に関する相談等」という。)があった場合は、迅速に状況を確認すること。 (3)合理的配慮の提供の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 2 監督者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。  (懲戒処分等) 第6条 職員が、障害のある人に対し不当な差別的取扱いをした場合、その態様等によっては、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当し、地公法第29条の規定に基づく懲戒処分等に付されることがあることに留意する。  (相談体制の整備) 第7条 健康福祉部地域福祉課(以下「地域福祉課」という。)に、障害のある人等から職員による障害を理由とする差別に関する相談等に的確に対応するための相談窓口を置く。 2 前項の相談窓口に相談等があった場合は、地域福祉課の職員は相談整理簿(別記様式)により、その内容を記録し、速やかに事実関係の調査及び確認を行うとともに、その結果を地域福祉課長に報告する。 3 地域福祉課長は前項の規定による報告を受けたときは、必要に応じて相談等の申し出者等に対し、事情聴取及び事実関係の確認を行い、相談に係る問題の解決を図る。 4 地域福祉課長は、必要に応じて外部の専門知識を有する者及び機関に指導・助言を求めるものとする。 5 第1項の相談窓口に寄せられた相談等は、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係機関等において情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。  (研修・啓発) 第8条 地域福祉課は、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、法や基本方針等の周知や、障害者のから話を聞く機会を設けるなど必要な研修及び啓発を行うものとする。 2 前項の研修を行うに当たっては、新たに職員となった者に対しては、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに監督者となった職員に対しては、障害を理由とする差別の解消に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、研修を実施するものとする。 3 第1項の啓発を行うに当たっては、職員が障害の特性を理解するとともに、性別や年齢にも配慮しつつ障害のある人に適切に対応するために、マニュアル等の活用により、意識の啓発を図るものとする。    附 則  この要領は、平成28年4月1日から施行する。    附 則  この要領は、平成28年8月22日から施行する。    附 則  この要領は、令和6年4月1日から施行する。 別紙 障害を理由とする差別の解消の推進に関する日進市職員対応要領に係る留意事項 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方  法は、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービス若しくは各種機会の提供を拒否すること又はこれらの提供に当たって場所、時間帯等を制限すること、障害のない人に対しては付さない条件を付けること等により、障害のある人の権利利益を侵害することを禁止している。なお、車椅子、補助犬、その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する。  また、障害のある人の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害のある人を障害のない人と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)をすること、法に規定された障害のある人に対する合理的配慮の提供による障害のない人との異なる取扱いをすること及び合理的配慮を提供する等のために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害のある人に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。  このように、不当な差別的取扱いとは、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じであるにもかかわらず、正当な理由なく、障害のある人を障害のない人より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 第2 正当な理由の判断の視点  第1の正当な理由に相当するのは、障害のある人に対して、障害を理由として、財・サービス又は各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。職員は、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害のある人及び第三者の権利利益(安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)、事務又は事業の目的、内容及び機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  また、職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害のある人にその理由を丁寧に説明し、理解を得るよう努めることとする。  その際、職員と障害のある人の双方が、お互いの相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。 第3 不当な差別的取扱いの例  正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに当たり得る例は、別表第1のとおりである。なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、これらの例だけに限られるものではないこと、正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、第2で示した観点等を踏まえて判断することが必要であること、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意する。 第4 合理的配慮の基本的な考え方 1 権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。  合理的配慮は、障害のある人が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、障害のある人が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。 2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものである。  合理的配慮は、事務又は事業の目的、内容及び機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害のない人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、並びに事務又は事業の目的、内容及び機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。その提供に当たってはこれらの点に留意した上で、当該障害のある人が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、第5に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要がある。  建設的対話に当たっては、障害のある人にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害のある人と職員が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要である。例えば、障害のある人自身が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、当該行政機関として対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられる。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。また、合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。  なお、障害のある人との関係性が長期にわたる場合等にあっては、その都度の合理的配慮の提供とは別に、4の環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減及び効率化につながる点は重要である。 3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振り、サイン等による合図、触覚による意思伝達等、障害のある人が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる点に留意する必要がある。  また、障害のある人からの意思の表明のみでなく、障害の特性等により本人の意思の表明が困難な場合には、障害のある人の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。  なお、意思の表明が困難な障害のある人が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合等、意思の表明がない場合であっても、当該障害のある人が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害のある人に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。 4 合理的配慮は、障害のある人等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害のある人に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害のある人との関係性が長期にわたる場合等にあっては、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。  なお、法において、不特定多数の障害のある人を想定して行われる公共施設や交通機関におけるバリアフリー化は、個々の障害のある人を対象として行われる合理的配慮を的確に行うための環境整備として、別途、行政機関等に努力義務が課せられており、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)等に基づき、引き続き推進してくこととする。 第5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、次の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害のある人にその理由を丁寧に説明し、理解を得るよう努めることとする。その際には前述のとおり、職員と障害のある人の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。 (1)事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容又は機能を損なうか否か) (2)物理的・技術的制約、人的・体制上の制約等を考慮した実現可能性の程度 (3)費用・負担の程度 第6 合理的配慮の例  第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、合理的配慮に当たり得る例は、別表第2のとおりである。なお、別表第2の例はあくまでも例示であり、必ず実施するものではないこと、記載されている例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意する必要がある。 第7 障害特性に応じた対応について   障害のある人と接する際には、それぞれの障害特性に応じた対応が求められる。  職員が対応する際の参考とするため、代表的な障害特性と対応時に配慮すべき事項について、別表第3に簡単にまとめている。  なお、障害のある子どもについては、成人の障害のある人とは異なる支援の必要性がある。子どもは、成長及び発達の途上にあり、乳幼児期の段階から個々の子どもの発達の段階や、一人一人の個性と能力に応じて丁寧に配慮された発達支援が必要である。また、子どもを養育する家族を含めた早い段階からの家族支援が必要である。特に、保護者が子どもの障害を知った時の気持ちを出発点とし、安心と希望をもって子育てができるように、十分な配慮と支援が必要である。  また、医療的ケアを要する障害のある子どもについては、配慮を要する程度に個人差があることに留意し、医療機関等と連携を図りながら、個々の状態や必要な支援を丁寧に確認し、適切な支援を行うことが必要である。  このほか、障害のある人が女性又は外国人である場合には、障害に加えて女性や外国人であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があるため、配慮が必要である。 別表第1 不当な差別的取扱いに当たり得る例 所属 例 全所属 1 障害があることを理由に窓口対応を拒否する。 2 障害があることを理由に対応の順序を後回しにする。 3 障害があることを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 4 障害があることを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 5 事務若しくは事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害があることを理由に、来庁の際に付添い者の同行を求めるなどの条件を付け、又は特に支障がないにもかかわらず、付添い者の同行を拒む。 施設利用関係 1 障害があることを理由にサービスの利用を拒否する。 (1)人的体制及び設備体制が整っており、対応可能であるにもかかわらず、医療的ケアの必要な障害のある人、重度の障害のある人又は多動の障害のある人の福祉サービスの利用を拒否する。  (2)身体障害者補助犬の同伴を拒否する。 2 障害があることを理由にサービスの利用を制限する(場所、時間帯等の制限)。  (1)対応を後回しにする。  (2)サービスの提供時間や提供場所を限定する。  (3)サービスの利用に必要な情報提供を行わない。 3 障害があることを理由にサービスの利用に際し条件を付す(障害のない人には付さない条件を付す)。  (1)保護者や介助者の同伴をサービスの利用条件とする。 (2)サービスの利用に当たって、他の利用者と異なる手順を課す(仮利用期間を設ける。他の利用者の同意を求める等。)。 4 障害があることを理由にサービスの利用・提供に当たって、他の者とは異なる取扱いをする。  (1)行事、娯楽等への参加を制限する。  (2)年齢相当のクラスに所属させない。  (3)本人を無視して、介助者や付添い者のみに話しかける。 (4)本人(本人の意思を確認することが困難な場合はその家族等)の意思に反したサービス(施設への入所等)を行う。 学校教育機関 1 障害があることを理由に、学校への入学の出願の受理、受験、入学、授業等の受講、研究指導、実習等校外教育活動、入寮若しくは式典参加を拒み、又はこれらを拒まない代わりとして正当な理由のない条件を付す。 2 試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に、当該試験等の結果を学習評価の対象から除外し、又は評価において差を付ける。 3 学校施設等の利用をさせない。 別表第2 合理的配慮に当たり得る配慮の例 1 物理的環境への配慮 所属 例 全所属 1 段差がある場合に、車椅子利用者に対し、キャスター上げ等の補助をする。また、携帯スロープがある施設では必要に応じて携帯スロープを渡す等対応する。 2 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡したり、パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。 3 目的の場所までの案内の際に、障害のある人の歩行速度に合わせた速度で歩く。前後・左右・距離の位置取りについて、障害のある人の希望を聞く。 4 障害の特性により、離席や移動の必要がある場合に、会場の座席位置を出入口付近にする。 5 車椅子を配置している施設では必要に応じて利用を案内する。 6 多目的トイレが設置されている施設では必要に応じて案内する。 7 疲労を感じやすい障害のある人から別室での休憩の申出があった場合で、別室の確保が困難であるときは、当該障害のある人に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子等を移動させて臨時の休憩スペースを設ける等の対応をする。 8 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害のある人に対し、職員が書類を押さえ、又はバインダー等の固定器具を提供する。 9 障害のある人用の駐車場は目的外の利用がされないよう注意を促す。 10 災害や事故が発生した際、館内放送等で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光表示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し、誘導を図る。 施設利用関係 1 エレベーターがない施設の上下階に移動する際、移動をサポートする。 2 電子メール、ウェブページ、ファクシミリなど多様な媒体で情報提供及び利用受付を行う。 3 館内放送を文字化したり、電光表示板や磁気誘導ループ等の補聴装置の設置又は音声ガイドの設置を行う。 4 色の組み合わせによる見えにくさを解消するため、標示物や案内図等の配色を工夫する。 5 トイレ、作業室等の部屋の種類や、その方向を示す絵記号や色別の表示等を設ける。 学校教育機関 1 移動に困難のある学生等のために、通学のための駐車場を確保する。参加する授業で使用する教室をアクセスしやすい場所に変更する。 2 聴覚過敏の生徒等のために教室の机及び椅子の脚に緩衝材を付けて雑音を軽減する、視覚情報の処理が苦手な生徒等のために黒板周りの掲示物等の情報量を減らすなど、個別の事案ごとに特性に応じて教室環境を変更する。 3 介助等を行う保護者、支援学生、支援員等の教室への入室、授業や試験でのパソコン入力支援、移動支援及び待合室での待機を許可する。 4 知的障害のある児童生徒に対し、見通しが持てるようにあらかじめ分かりやすいスケジュールカードを提示したり、終了時間が視覚的に分かるようにタイマーで示したりする。 2 意思疎通の配慮 所属 例 全所属 1 筆談、読み上げ、手話、身振り、口話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。なお、筆談をする際には、簡潔な言葉を使う、二重否定表現等難しい言い回しは避ける、携帯電話画面の利用など読みやすい文字を使うといった点に留意する。 2 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。 3 視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際は、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 4 意思疎通が不得意な障害のある人に対し、実物や絵カード等を活用して本人に分かる方法で意思を確認する。 5 駐車場等で通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 6 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示し、又は分かりやすい記述で伝達する。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。 7 比喩表現等が苦手な障害のある人に対し、比喩や暗喩、二重否定表現等を用いずに説明する。 8 障害のある人から申出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。 9 来庁が困難な方について、申請等で可能なものは、郵送やメール等で受付できるように努める。 10 インターネットを通じて情報提供をする場合は、音声読み上げソフトに対応したホームページを作成するよう留意する。電子書類等を掲載する場合は、文字情報の入った電子書類等を掲載する、テキスト形式の電子書類を併せて掲載するなど配慮する。 11 情報保障の観点から、見えにくさに応じた情報の提供(聞くことで内容が理解できる説明・資料や、拡大コピー、拡大文字又は点字を用いた資料、遠くのものや動きの速いものなど、触ることができないものを確認できる模型や写真等の提供)、聞えにくさに応じた視覚的な情報の提供、知的障害に配慮した情報の提供(伝える内容の要点を筆記する、漢字にルビを振る、なじみのない外来語は避ける等)を行う。 12 会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートをする等の配慮を行う。 施設利用関係 1 説明文書の点字版、拡大文字版、テキストデータ又は音声データ(コード化したものを含む。)を提供する。 2 手話、要約筆記、筆談、図解、振り仮名付き文書の使用等、分かりやすい説明を行う。 3 必要に応じて、手話通訳者や要約筆記者を配置する。 4 文書を読み上げる。口頭による丁寧な説明を行う。 5 声がよく聞こえるように、また、口の動きや表情を読めるようマスクを外して話をする。 6 コンピューター等の情報通信技術を活用したコミュニケーション機器(音声を文字変換すること、表示された絵などを選択すること等ができる機器)を設置する。 学校教育機関 1 知的障害のある児童生徒に対し、抽象的な言葉ではなく、具体的な言葉を使う。例えば、教育活動を受ける際の「仮説」や「考察」など学習上必要な言葉等の意味を具体的に説明して、理解を確認する。 2 発達障害等により言葉だけを聞いて理解することが困難な児童生徒に対し、具体的・視覚的な提示の仕方を工夫する。 3 病気で移動範囲や活動量が制限されている児童生徒に対し、情報通信技術等(メールやテレビ会議システム等の利用による、リアルタイムのコミュニケーション及びインターネット等を活用した疑似体験等)を活用する。 4 弱視等の視覚障害のある児童生徒に対し、弱視レンズ等を活用する。 5 聞こえにくさのある児童生徒に対し、補聴器等を活用する。 6 事務手続の際に、教職員等が必要書類の代筆をする。 7 通信手段として、携帯電話やスマートフォン及びタブレット端末等の利用を許可する。 3 ルール・慣行の柔軟な変更 所属 例 全所属 1 順番を待つことが苦手な障害のある人に対し、必要に応じて周囲の者の理解を得た上で、手続の順番を入れ替える。 2 障害のある人が立って列に並んで順番を待っている場合に、必要に応じて周囲の者の理解を得た上で、当該障害のある人の順番が来るまで別室や席を用意する。 3 スクリーン、手話通訳者、要約筆記、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 4 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 5 障害のある人の来庁が多数見込まれる場合は、敷地内の駐車場等において、通常、障害のある人専用とされていない区画を障害のある人専用の区画に変更する。 6 他人との接触又は多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合は、当該障害のある人に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。 7 非公表の会議又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 施設利用関係 1 障害の特性に応じて休憩時間の調整等を行う。 2 パニック等を起こした際に静かに休憩できる場所を設ける。 学校教育機関 1 入学試験において、本人又は保護者の希望、障害の状況等を踏まえ、別室での受験、試験時間の延長、点字、拡大文字又は音声読み上げ機能の使用等を許可する。 2 授業で使用する教科書や資料及び問題文を点訳したもの、拡大したもの又はテキストデータを事前に渡す。 3 知的発達の遅れにより学習内容の習得が困難な生徒等に対し、理解の程度に応じて、視覚的に分かりやすい教材を用意する。 4 知的障害のある児童生徒の体育の際に、ルールの変更や簡易化を図る。 5 肢体不自由のある生徒等に対し、体育の授業の際に、上・下肢の機能に応じてボールの大きさや投げる距離を変えたり、走る距離を短くしたり、スポーツ用車椅子の使用を許可したりする。 6 日常的に医療的ケアを要する生徒等に対し、本人が対応可能な場合もあることなどを含め、配慮を要する程度には個人差があることに留意して、医療機関や介助者等と連携を図り、個々の状態や必要な支援を丁寧に確認し、過剰に活動の制限等をしないようにする。 7 慢性的な病気等のために他の生徒等と同じように運動ができない生徒等に対し、運動量を軽減する、代替となる運動を用意するなど、病気等の特性を理解し、過度に予防又は排除をすることなく、参加するための工夫をする。 8 治療等のため学習できない期間が生じる生徒等に対し、補講を行うなど、学習機会を確保する。 9 読み・書き等に困難のある生徒等のために、授業や試験でのタブレット端末等の情報通信技術を活用した機器の使用を許可したり、筆記に代えて口頭試問による学習評価を行ったりする。 10 発達障害等のため、人前での発表が困難な生徒等に対し、代替措置としてレポートを課したり、発表を録画したもので学習評価を行ったりする。 11 学校生活全般において、適切な対人関係の形成に困難がある生徒等のために、能動的な学習活動等においてグループを編成するときには、事前に伝え、場合によっては本人の意向を確認する。また、こだわりのある生徒等のために、話合いや発表等の場面において、意思を伝えることに時間を要する場合があることを考慮して、時間を十分に確保し、又は個別に対応する。 12 実験実習などでグループワークができない児童生徒や、実験の手順や試薬、設備・機器の操作を混同し、作業が危険な児童生徒に対し、個別の実験時間や実験課題の設定、個別のTA(ティーチングアシスタント)等を付ける。 13 聞こえにくさのある児童生徒の外国語のリスニングの際に、音質・音量を調整する。文字による代替問題を用意する。 別表第3 障害特性に応じた対応 1 視覚障害(視力障害・視野障害) 摘要 主な特性 1 先天性で受障する人のほか、最近は糖尿病性網膜症等で受障する人も多く、高齢者では、緑内障や黄斑部変性症が多い。 2 視力障害(全盲又は弱視といわれることもある。)  視覚的な情報を全く又はほとんど得られない人と、文字の拡大や視覚補助具等の使用により保有する視力を活用できる人に大きく分けられる。 (1)視力をほとんど活用できない人の場合は、聴覚、触覚、嗅覚等、視覚以外の感覚を手がかりに周囲の状況を把握している。 (2)文字の読みとりは、点字に加えて、最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンで行うこともある(点字の読み書きができる人ばかりではない。)。 (3)視力をある程度活用できる人の場合は、補助具を使用する、文字を拡大する、近づいて見るなどの様々な工夫をして情報を得ている。 3 視野障害   目を動かさないで見ることのできる範囲が狭くなる。  (1)求心性視野狭窄    見える部分が中心だけになって段々と周囲が見えなくなる。    遠くは見えるが足元が見えず、つまづきやすくなる。  (2)中心暗点    周囲はぼんやり見えるが真ん中が見えない。    文字等、見ようとする部分が見えなくなる。 主な対応 1 音声や点字表示等、視覚情報を代替する配慮を行う。 2 中途受障の人では白杖を用いた歩行や点字の触読が困難な人も多いため留意する。 3 声をかけるときには、前から近づき、「○○さん、こんにちは。△△です。」など自ら名乗る。 4 説明するときには、「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」等の指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」等と具体的に説明する。 5 普段から通路(点字ブロックの上等)に通行の妨げになるものを置かない、日頃視覚障害者が使用しているものの位置を変えないなど留意する。 6 書面は必要や希望に応じて読み上げて説明する。この際、個人情報に関わる事項については、周囲に聞こえないよう留意する。 7 応対中に席を外す場合や、席に戻った際には声をかける。 8 申請等で可能なものは、点字文書やメール等で受付できるように努める。 9 不特定多数の人を対象とするイベント等では、その内容や対象者等により、必要に応じて点字版や拡大版などの資料等を準備するように努める。 10 事前広報は、活字媒体だけでなく、インターネットの活用等、幅広い手段で行う。 11 主に弱視の場合は、室内における照明の状況に応じて、窓を背にして座ってもらうなどの配慮が必要である。 2 聴覚障害 摘要 主な特性 1 聴覚障害は外見上分かりにくい障害であり、その人が抱えている困難も他の人からは気付かれにくい側面がある。特に難聴・中途失聴者は話すことができるため、聴覚障害であることを理解されにくい。 2 聴覚障害者が用いるコミュニケーション方法は、補聴器や人工内耳を装着するほか、手話、要約筆記、筆談、口話など様々な方法があるが、どれか一つで十分ということではなく、多くの聴覚障害者は話す相手や場面・環境によって複数の手段を組み合わせるなど使い分けている。 3 補聴器や人工内耳を装着していても、スピーカーを通じる等の残響や反響のある音は、聞き取りにくい。 4 聴覚の活用による言葉の習得に課題があることにより、聴覚障害者の国語力は様々である。 主な対応 1 手話や文字表示、手話通訳者や要約筆記者の配置等、目で見て分かる情報を提示することなどによりコミュニケーションをとる配慮を行う。 2 補聴器や人工内耳を装用し、残響や反響のある音を聞き取ることが困難な場合には、必要に応じて代替する対応をするよう配慮する(マイクの使用を伴う磁気誘導ループ、FM補聴器の利用等)。 3 音声だけで話すことは極力避け、視覚的でより具体的な情報も併用する。 4 筆談をする場合は、短い文で簡潔に書く。図や記号を用いて表現を明確にする。 5 スマートフォン等のアプリケーションソフトに音声を文字や手話に変換できるものがあり、これらを使用すると筆談を補うことができる。 6 ゆっくり、はっきり口元がわかるように話す。 7 耳マークを窓口に設置し、本人の意向を確認して筆談などで対応する。 8 聞き取りにくかった場合は、推測せず、聞き返す、紙に書いてもらうなど、本人の意思を確認する。 9 特に重要なことや、日時・金額などの数字はメモに書いて渡す。 10 広報用ビデオやDVD等を作成する場合、インターネット動画を通じて情報提供をする場合は、必要に応じて字幕やテロップを付けるなど音声以外での情報提供に配慮する。 11 問合せ先として、ファックス番号を記載する。必要に応じてメールアドレスを併記するように努める。 12 文字の読み書きが困難な場合、窓口等における申請書類の記載等を支援する。 3 盲ろう(視覚と聴覚の重複障害) 摘要 主な特性 1 視覚と聴覚の重複障害の人を「盲ろう」と呼んでいるが、障害の状態や程度によって様々なタイプに分けられる。  (1)見え方と聴こえ方の組合せによるもの    ア 全く見えず聴こえない状態の「全盲ろう」    イ 見えにくく聴こえない状態の「弱視ろう」    ウ 全く見えず聴こえにくい状態の「盲難聴」    エ 見えにくく聴こえにくい状態の「弱視難聴」  (2)各障害の発症経緯によるもの    ア 盲(視覚障害)から聴覚障害を伴った「盲ベース盲ろう」    イ ろう(聴覚障害)から視覚障害を伴った「ろうベース盲ろう」 ウ 先天的あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症する「先天性盲ろう」    エ 成人期以後に視覚と聴覚の障害が発症する「成人期盲ろう」 2 盲ろう者が使用するコミュニケーション手段は、障害の状態や程度、盲ろうになるまでの経緯、生育歴又は他の障害との重複の仕方によって異なり、介助方法も異なる。 3 盲ろうの程度によって、テレビやラジオを楽しむこと、本や雑誌を読むことなどもできず、家族といてもほとんど会話がないため、孤独な生活を強いられることが多い。 4 盲ろうの状況により、コミュニケーション、情報入手又は移動に困難がある。 主な対応 1 必要に応じて盲ろう者関係機関に相談し、対応に関する助言を受ける。 2 障害の状態や程度に応じ視覚障害や聴覚障害の人と同じ対応が可能な場合があるが、同様な対応が困難な場合には、手書き文字や触手話、指点字等の代替する対応(個々の盲ろう者に合わせた対応)をするよう配慮をする。 3 言葉の通訳に加えて、視覚的・聴覚的情報(状況説明として、人に関する情報(人数、性別、表情、動作等)、環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)など)についても意識的に伝える。 4 肢体不自由者 (1)車椅子を使用している場合 摘要 主な特性 1 脊髄損傷(対麻痺又は四肢麻痺、排泄障害、知覚障害、体温調節障害等) 2 脳性麻痺(不随意運動、手足の緊張、言語障害等。知的障害との重複の場合もある。) 3 脳血管障害(片麻痺、運動失調等) 4 病気等による筋力低下や関節損傷等で歩行が困難な場合もある。 5 ベッドへの移乗、着替え、洗面、トイレ、入浴等、日常の様々な場面で援助が必要な人の割合が高い。 6 車椅子使用者にとっては、段差や坂道が移動の大きな妨げになる。 7 手動車椅子の使用が困難な場合は、電動車椅子を使用する場合もある。 8 障害が重複する場合には、呼吸器を使用する場合もある。 主な対応 1 段差をなくすこと、車椅子移動時の幅・走行面の斜度、車椅子用トイレの設置、施設のドアを引き戸や自動ドアにすることなどについて、配慮を行う。 2 車椅子使用者が机の前に来たときの車椅子が入れる高さや作業を容易にする手の届く範囲を考慮する。 3 ドア、エレベーターの中のスイッチ等の機器操作のための配慮を行う。 4 目線を合わせて会話する。 5 脊髄損傷者は体温調整障害を伴うことがあるため、部屋の温度管理に配慮する。 6 講演会等では車椅子使用者や支援者用のスペースを確保する。 7 車椅子使用者に配慮した記載台や机等を用意する。 (2)杖などを使用している場合 摘要 主な特性 1 脳血管障害(歩行可能な片麻痺、運動失調等) 2 麻痺の程度が軽いため、杖や装具での歩行が可能な場合や、切断者等で義足を使用して歩行可能な場合は、日常生活動作は自立している人が多い。 3 失語症や高次脳機能障害がある場合もある。 4 長距離の歩行が困難な場合又は階段、段差、エスカレーター若しくは人混みでの移動が困難な場合もあり、配慮が必要である。 主な対応 1 上下階に移動するときのエレベーター又は手すりを設置する。 2 滑りやすい床は転びやすいので、雨天時の対応を行う。 3 トイレでの杖置きを設置する、靴の履き替えが必要な場合に椅子を用意するなどの配慮を行う。 4 上肢の障害があれば、片手や筋力低下した状態で作業ができるよう配慮する。 5 構音障害 摘要 主な特性 1 話す言葉自体を会話の相手方が聞き取ることが困難な状態。 2 話す運動機能の障害、聴覚障害、咽頭摘出等の原因がある。 主な対応 1 しっかりと話を聞く。 2 会話補助装置等を使ってコミュニケーションをとることも考慮する。 3 会話が困難な場合、筆談等言語以外のコミュニケーションに努める。 6 失語症 摘要 主な特性 1 聞くことの障害 (1)音は聞こえるが、「言葉」の理解に障害があり、「話」の内容が分からない。 (2)単語や簡単な文章なら分かる人でも早口や長い話になると分からなくなる。 2 話すことの障害  (1)伝えたいことをうまく言葉や文章にできない。  (2)発話がぎこちない。言いよどみが多くなる。誤った言葉で話す。 3 読むことの障害   文字を読んでも理解することが難しい。 4 書くことの障害  書き間違いが多い。また、「てにをは」等をうまく使えない。文を書くことが難しい。 主な対応 1 表情が分かるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短い言葉や文章で、分かりやすく話しかける。 2 一度でうまく伝わらないときは、繰り返して言う、別の言葉に言い換える、漢字や絵で書く、写真・実物・ジェスチャーで示すなどの対応をすると理解しやすい。 3 「はい」「いいえ」で答えられるように問い掛けると理解しやすい。 4 話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いると、コミュニケーションの助けとなる。 7 高次脳機能障害  交通事故や脳血管障害等の病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動の障害。身体的には障害が残らないことも多く、外見では分かりにくいため、「見えない障害」とも言われている。 摘要 主な特性 1 次の症状が現れる場合がある。  (1)記憶障害  すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりする。  (2)注意障害  集中力が続かない。あるいは、ぼんやりしてしまい、何かをするとミスが多く見られる。   二つのことを同時にしようとすると混乱する。  主に体の左側で、食べ物を残したり、障害物に気が付かなかったりすることがある(左側空間無視)。  (3)遂行機能障害  自分で計画を立てて物事を実行することや効率よく順序立てることができない。  (4)社会的行動障害   ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすい。   こだわりが強く表れる。あるいは、欲しいものを我慢できない。   思い通りにならないと大声を出したり、時に暴力を振るったりする。  (5)病識欠如  (1)から(4)までのような症状があることに気づかず、できるつもりで行動してトラブルになる。 2 失語症を伴う場合がある(失語症の項を参照)。 3 片麻痺、運動失調等の運動障害や目や耳の損傷による感覚障害を伴う場合がある。 主な対応 1 記憶障害 (1)自分でメモを取ってもらい、双方で確認する。 (2)残存する受障前の知識や経験を活用する(例えば、過去に記憶している自宅周囲では迷わず行動できる。)。 2 注意障害 (1)短時間なら集中できる場合もあるので、こまめに休憩をとるなど。 (2)一つずつ順番にやる。 (3)左側空間無視がある場合には、左側に危険なものを置かない。 3 遂行機能障害  (1)手順書がある場合は利用する。  (2)必要に応じて段取りを決めて目につくところに掲示する。 4 社会的行動障害  感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えて落ち着かせる。 8 内部障害 摘要 主な特性 1 心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、肝機能又はHIVによる免疫機能のいずれかの障害により日常生活に支障がある。 2 疲れやすく長時間の立位や作業が困難な場合がある。 3 常に医療的対応を必要とすることが多い。 主な対応 1 ペースメーカーは外部からの電気や磁力に影響を受けることがあるので、注意すべき機器や場所等の知識を持つ。 2 排泄に関し、人工肛門の場合は、パウチ洗浄等の特殊な設備が必要となることに配慮する。 3 人工透析が必要な人については、通院に配慮する。 4 呼吸器機能障害のある人については、慢性的な呼吸困難、息切れ、咳等の症状があることを理解し、息苦しくならないよう、楽な姿勢でゆっくり話をしてもらうよう配慮する。 5 常時酸素吸入が必要な人については、携帯用酸素ボンベが必要な場合があることを理解する。 6 体調に配慮し、必要に応じて、椅子等のあるところに案内して、職員が窓口から出て対応する。 9 重症心身障害その他医療的ケアが必要な者 摘要 主な特性 1 自分で体を動かすことができない重度の肢体不自由と、年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害が重複している。 2 ほとんど寝たままで自力では起き上がれない状態が多い。 3 移動、食事、着替え、洗面、トイレ、入浴等が自力ではできないため、日常の様々な場面で介助者による援助が必要である。 4 常に医学的管理下でなければ、呼吸することも栄養をとることも困難な人もいる。 5 重度の肢体不自由や重度の知的障害はないが、人工呼吸器を装着するなど医療的ケアが必要な人もいる。 主な対応 1 人工呼吸器等を装着して専用の車椅子で移動する人もいるため、電車やバスの乗降時等において、周囲の人が手伝って車椅子を持ち上げるなどの配慮が必要である。 2 体温調節がうまくできないことも多いので、部屋の温度管理に配慮する。 10 知的障害 摘要 主な特性 1 考える、理解する、読む、書く、計算する、話す等の脳の知的機能の発達がゆっくりであり、その程度は一人一人異なる。 2 金銭管理、会話、買い物、家事等の日常生活への適応にも状態に応じた援助が必要である場合が多い。 3 てんかん等他の障害を合併する場合もある。 主な対応 1 言葉による説明などを理解しにくいため、ゆっくり、丁寧に、分かりやすく話すことが必要である。 2 文書は漢字を少なくしてルビを振る、分かりやすい表現に直すなどの配慮で理解しやすくなる場合があるが、一人一人の障害の特性により異なる。 3 講演会等では静かで落ち着ける場所(部屋)の設置に努める。 4 写真、絵、図記号(ピクトグラム)など分かりやすい情報提供の工夫をする。 5 説明が分からないときに提示するカードを用意する、本人をよく知る支援者が同席するなど、理解しやすくなる環境の工夫をする。 11 発達障害 (1)自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(自閉症スペクトラム) 摘要 主な特性 1 脳の機能のアンバランスさから得意・不得意の差が大きく、持っている障害特性が一人一人異なる。 2 相手の表情や態度などよりも、文字や図形など、物の方に関心が強い場合もある。 3 見通しの立たない状況では不安が強いが、見通しの立つ時は不安を感じない。 4 大勢の人がいる所や気温の変化等の感覚刺激への敏感さで苦労しているが、それが芸術的な才能につながることもある。 5 痛みや疲れを感じにくいなどの特性がある場合がある。 主な対応 1 肯定的、具体的及び視覚的な伝え方の工夫をする(「○○をしましょう」といったシンプルな伝え方をする、その人の興味や関心に沿った内容とする、図やイラスト等を使って説明するなど。)。 2 何かを伝えたり依頼をしたりする場合は、手順を示す、モデルを見せる、体験練習をするなどその人に合わせた方法で行う。 3 感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整を行う(大声で説明せず視覚的に内容を伝える、クーラー等の設備のある部屋を利用できるように配慮するなど。)。 4 感覚鈍麻がある場合は、周りの人が注意・配慮する。 (2)学習障害(限局性学習障害) 摘要 主な特性  「話す」「理解する」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」のいずれか1つ以上が、努力しても極端に苦手である。 主な対応 1 得意な方法を積極的に使って、情報を理解し、表現できるようにする(パソコン等の情報通信機器を活用する際は、文字を大きくしたり、行間を空けたりして、読みやすくなるように工夫する)。 2 苦手な部分について、課題の量・質を適切に加減し、又は柔軟な評価や対応をする。 (3)注意欠陥・多動性障害(注意欠如・多動性障害) 摘要 主な特性 1 次々と周囲のものに関心を持ち、周囲の者よりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い。 2 集中できない、うっかりミスが多い、順番を待つことが苦手で動き回る、考えるよりも先に言動を起こしてしまうなどの場合もある。 主な対応 1 短く、はっきりとした言い方で伝える。 2 指示等は、伝わりやすいよう、言葉だけでなく、リストやスケジュールなど、視覚で示す。 3 気の散りにくい座席の位置の工夫、分かりやすいルールの提示等の配慮を行う。 (4)その他の発達障害 摘要 主な特性  体の動かし方の不器用さ、我慢していても声が出たり体が動いてしまったりするチック、一般的に吃音といわれるような話し方なども、発達障害に含まれる。 主な対応 1 叱ったり拒否的な態度を取ったり、笑ったり、ひやかしたりしない。 2 日常的な行動の一つとして受け止め、時間をかけて待つ。 12 精神障害  精神障害の原因となる精神疾患は、統合失調症や気分障害を始めとして様々なものがあり、原因となる精神疾患によって、その障害特性は異なる。  精神障害の原因となる主な疾患は、次のとおりである。 (1)統合失調症 摘要 主な特性 1 発症の原因はよく分かっていないが、100人に1人程度がかかる、一般的な病気である。 2 「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状(常にあるとは限らない)であるが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることがある。 3 陽性症状 (1)自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴など、実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚(幻覚)が現れる。 (2)誰かに嫌がらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想など、現実離れした内容を確信してしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考え(妄想)が現れる。 4 陰性症状  (1)意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなる。  (2)疲れやすく集中力が保てず、人付き合いを避けて、引きこもりがちになる、入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となるなど。 5 認知や行動の障害  (1)考えがまとまらず、言いたいことを分かりやすく表現できない。 (2)相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない。 主な対応 1 統合失調症は誰もがかかりうる脳の病気であるが、治療可能であることを理解する。 2 薬物療法など治療が重要であり、治療しながら社会参加が十分に可能であることを理解する。 3 社会との接点を保つことも治療となるため、病気と付き合いながら、他者と交流し、又は仕事に就くことが、治療上有益であることを理解する。 4 ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心掛ける。 5 一度に多くの情報が入ると混乱するので、一度に伝える情報は絞るようにし、伝える情報は紙に書くなどしてゆっくり具体的に伝えることを心掛ける。 6 症状が強い時には無理をさせず、しっかりと休養をとること、速やかに主治医を受診することなどを促す。 (2)気分障害 摘要 主な特性 1 気分の波が主な症状として現れる病気である。鬱状態のみを認める場合は鬱病と呼び、鬱状態と躁状態を繰り返す場合は、双極性障害(躁鬱病)と呼ぶ。 2 鬱状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状が出る。 3 躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でもできると思い込んで人の話を聞かなくなったりする。 主な対応 1 怠けや気持ちの持ち方ではなく病気であることを理解する。 2 必要に応じて専門家に相談したり、専門機関で治療を受けたりするように勧める。 3 鬱状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する。 4 躁状態の時は、安全の管理等に気を付ける。 5 自分を傷つけてしまったり、自殺に至ったりすることもあるため、自殺等を疑わせるような言動があった場合には、本人の安全に配慮した上で、速やかに専門家に相談するよう本人や家族等に促す。 (3)依存症(アルコール) 摘要 主な特性 1 飲酒したいという強い欲求のコントロールができず、過剰に飲酒したり、昼夜問わず飲酒したりすることで、身体上及び社会生活上の様々な問題が生じる。 2 体がアルコールに慣れることで、アルコールが体から抜けると、発汗、頻脈、手の震え、不安、イライラ等の離脱症状が出る。 3 断酒しようとしても、離脱症状の不快感や日常生活での不安感から逃れるために、また飲んでしまう。 主な対応  脳との関連がわかっている精神疾患であり、性格や意思が弱いことが原因ではないことを理解する。 (4)てんかん 摘要 主な特性 1 何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作が起きる。 2 発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある。 主な対応 1 誰もがかかる可能性がある一般的な脳疾患であるが、ほとんどの場合は、薬物療法等の治療により発作を抑えることができることを理解する。 2 発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能なので、発作がコントロールされている場合は、過剰に活動を制限しない。 13 難病 摘要 主な特性 1 神経筋疾患、骨関節疾患、感覚器疾患など様々な疾病により多彩な障害を生じる。 2 常に医療的対応を必要とすることが多い。 3 病態や障害が進行する場合が多い。 主な対応 1 それぞれの難病の特性が異なり、その特性に合わせた対応が必要であることを理解する。 2 進行する場合は、病態・障害の変化に対応が必要であることを理解する。 3 排泄の問題、疲れやすさ、状態の変動等に留意が必要であることを理解する。 4 体調が優れない時に休憩できる場所を確保する。